DBCInsight
2022年12月2日
DBCInsightは産業変革、規制改革領域において事業創造に取り組むデジタルベースキャピタルがお届けするレポートシリーズです。
はじめに
PropTech JAPAN、株式会社デジタルベースキャピタルは2022年10月21日にProptech & Contech Startup Conference 2022という不動産、建設DXスタートアップに特化したリアルカンファレンスを3年振りに開催した。当日は約400名が来場し熱気に包まれた。
公募にて選出された20社のスタートアップがピッチ登壇、ブース出展を実施した。11月17日、当日デモセッション1のグループに登壇された皆様をお招きしてイベントの振り返りからレガシー産業DXの今後について話を伺った。
デジタルベースキャピタル須崎(以下DBC須崎):PropTech&ConTech Startup Conference 2022 Review Event 第二弾を開始いたします。はじめに皆様の事業紹介を一言でお願いします。
ユニロボット株式会社システムプラットフォーム事業部門 営業チーム 楠 慧三氏(以下ユニロボット楠氏):ユニロボットは「Unibo」というロボットの開発と、対話型のAIプラットフォームの開発を行っています。
飲食業をはじめ様々な業界で利用されていますが、人手不足やDXといった面からも不動産業界においても親和性の高いサービスと考えています。
スマイルホーム株式会社代表取締役長谷 佳美氏(以下スマイルホーム長谷氏):スマイルホームでは、不動産賃貸の領域において、プラットフォームサービスを通して事業者の労働生産性の向上や人手不足、外国人対応の課題を解決しています。
nat株式会社マーケティング部 部長 若狭 僚介氏(以下nat若狭氏):私たちは内装業界における工務店やリフォーム会社に対して、見積もり前の現地調査に係る工数の短縮を目的とした3D測量アプリによる図面作成、測量をサービスとして提供しています。
テレワーク・テクノロジーズ株式会社 代表取締役 荒木 賢二郎氏(以下テレワーク・テクノロジーズ荒木氏):私たちはテレワークを導入した大企業の総務部を対象に、多岐にわたるテレワークスペースやテレワークサービスを一箇所にまとめることで社員のテレワークスペース利用に伴うあらゆる管理をサポートするサービスを提供しています。
リアル領域特有の課題解決にアイデアとテクノロジーで取り組む
DBC須崎:ご紹介いただいたサービスについて、そのサービスを始めたキッカケを教えてください。
スマイルホーム長谷氏:日本において外国人の方が賃貸契約を結びにくい状況を目の当たりにしたことがあり、外国人の対応を進めていくにはまず不動産業界において労働生産性を向上させることが必要だと感じたからです。デジタル化することによって人手不足や家賃単価の低さなどの業界課題を解決できると考え取り組むことになりました。
DBC須崎:外国人向けサービスという点について、日本人向けの国内サービスなど一番異なる点はどのような点でしょうか。
スマイルホーム長谷氏:業務支援ツールですので日本人顧客にもそのまま使っていただけますが、今後外国人に対応するという需要が伸びてくると考えてわかりやすく外国人向けとしています。日本人より外国人の方が家探しに困っているという状況もあり、その部分がボトルネックになってくると考えています。
nat若狭氏:建設業界における時間外労働の問題について、特にリフォーム業界では受注する受注しないに関わらず見積もりを出すまでに現地調査や図面作成といった作業が多く、本来時間を割きたい設計やお客様対応といった部分以外の時間が取られてしまう課題を解決したいとの想いからです。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:満員電車を解消したいという思いがキッカケであり、毎日出勤を減らすための働き方に関わるサービスをいくつか進めていく中でコロナの流れもあり、今はワークスペースのマッチングサービスにピボットした形になります。
ユニロボット楠氏:元々はロボットを作っていた会社であり、機械的ではなく人間味のあるロボットとして「Unibo」を開発しました。あわせて音声テクノロジーについては、業界を問わず展開できると考えており、コミュニケーションテクノロジーに携わっていくことがあらゆる業界のDXにもつながってくると思っています。
カンファレンスで得られた熱気とフィードバック
DBC須崎:カンファレンス当日のピッチについて、登壇の感想、思っていたこと、考えていたことを教えてください。
nat若狭氏:テック系スタートアップが集う大きなイベントで他の事業者の情報をキャッチアップできたこと、工務店などに対する営業のアプローチが難しいことなどのそれぞれの事業者が抱える課題についてお互いに情報交換できたことが大きいと感じています。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:リアルイベントということで、人の反応がリアルタイムでわかるのはグッとくるものがありました。また、とても内容が濃く、集まっている人の熱量に圧倒されました。ピッチ終了後も声をかけていただき、管理職の方ではなく現場の生の声を収集できたことが大きいです。
ユニロボット楠氏:朝一のピッチだったので人が集まるのか不安でしたが、一番初めの発表ということでなんとか盛り上げていきたいという思いもありました。その中で、音声テクノロジーという点に気づいてもらうことが私の登壇の目的だったので、無事に伝えられてよかったです。
スマイルホーム長谷氏:とても熱気のある雰囲気の中でピッチできたことや他の事業者の方の考えなども学ぶことができてとても有意義でした。招待した方や関係者の方も丸一日カンファレンスを楽しんで帰られていたのでその点もよかった。
各社が力を入れている強みとなるポイントとは
DBC須崎:集まった人の熱気もすごかったですが、スタートアップピッチの内容も含めて全体としてとても質の高いイベントになったと改めて感じました。
皆様のサービスにおいて一番の特徴や強みと言える部分はどんな点でしょうか。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:スペースのマッチングにおいて、アグリゲーション(集約型)サービスであるという点だと思います。
いろんなサイトを横断して検索できる点が強みであり、一人の社員の方がアカウントを20個も30個も保有して、それぞれのサイトでログインしないといけない状況になっていることもあり、その点で強みが発揮されてきます。
ユニロボット楠氏:AI電話については品質の高さが特徴的で、本当の人間の声と間違われることもありました。ユニボについては個性をカスタマイズできるという点でニーズにあった開発がしやすいという点が挙げられます。
スマイルホーム長谷氏:スマイルホームの最大の特徴は導入したその日から外国人対応できる点です。
システム導入がないので、ネット環境だけあれば即日開始できる点も大きく、反響課金がない点も業界としては特徴的な点になります。
nat若狭氏:リフォームにおける現地調査から図面作成に係る時間を短縮できる点です。
10分から15分で撮影が完了し、翌日には図面が上がっているという状態にできるので、全体として作業時間を短縮できる点がポイントです。
DBC須崎
説明いただいた特徴、強みが顧客に最も刺さるポイントだと思いますが、実際に導入された顧客の声などを教えてください。
ユニロボット楠氏:ユニボではいろんな業界で展開しており、算数を教えることもしているが、実際の先生と異なり怒られることがないので子供が学習しやすいといった意外な声をいただいたこともあります。
AI電話については音声の品質が高く、人の声と間違えるという意見もあり、人とロボットの付き合い方には様々な距離感があるのかと感じています。
スマイルホーム長谷氏:不動産事業者の方から、『頑張ってほしい』『システム導入している仲介事業者を紹介してほしい』と言われた時は嬉しかったです。
入居者については、支援していた外国人の方が入社日までに間に合って入居できた時に本国のお母さまがとても感謝していると言われ、とても嬉しかったです。
nat若狭氏:地場の工務店への営業で、『便利なツールだがお客さんとの会話の時間が短くなる』と言われたことがあります。
地場の事業者は地域に根付いていることもあり、単なる便利なツールではなくサービスをしっかりと地域の習慣に適応させていく必要があると考えています。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:実際にスペースを利用する社員にヒアリングした時に、結構些細な個人向けの利益誘導がポイントになっているとわかったことがあります。
我々の仮説ではモニターが大きい、高質な椅子を使っている、などがポイントになるかと思っていましたが、実際はお茶が無料ということや、弁当を配っているという点が個人のインセンティブになっており、大きな発見でありました。
資金調達、協業、イベントで掴んだ接点を事業へ
DBC須崎:顧客の声を教えていただきましたが、カンファレンスにおいてもたくさんのお声をいただいたと思います。サービスについてこんな意見をいただいたというものがありましたら教えてください。
スマイルホーム長谷氏:ピッチを聞いていた方から『ピッチ良かったですね』『興味を持ちました』と言っていただき、名刺交換するなど交流しました。
nat若狭氏:『一緒に仕事している工務店に紹介したい』というありがたいお声をいただき、早速アポイントも進んでおりとても良かったです。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:個人の方から使いたいというご意見を頂けたことは意外でした。今はエンタープライズ専門でやっているので、個人向けは難しいなと思いつつ、そのような発見は良かったです。
また、実際に利用する個人の動機と顧客となる総務部の考えにはズレがあることがわかり、総務部は社員に生産性高くは働いてほしいと考えているが、社員はどう休憩できるかなども考えており、ズレがあることが判明したことも大きいです。
ユニロボット楠氏:弊社はパートナーと一緒に作り上げていくことが多いので、『ぜひ一緒にやりましょう』というお声はとても嬉しかったです。また、他の登壇者ともお話しできて、繋がりができたことも財産となっています。
DBC須崎:様々な方面からいろんな声が飛んでくる中で、今後特にこの方面に力を入れていきたいというものがあれば教えてください。
nat若狭氏:認知度が一番重要だと思っています。リアルチャネルを中心に営業活動していますが、地場の工務店に向けたいろいろなアプローチを検討しています。
認知度によって商談の結果にも影響があると考えているため、認知度を上げることを第一と考えています。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:システム開発に力を入れております。システムの裏側における連携が必要になり、ホテル業界、シェアオフィス業界、会議室業界など全てを繋いでいくことになります。ですので、今は地道に一つずつ繋いでいることに注力しています。
ユニロボット楠氏:いろいろな業界とパートナーを組んで展開していくため、BtoBtoCの真ん中のBとなるパートナーを獲得することが大きなポイントとなります。
不動産業界においても音声領域も拡大しており、ボイスボットも年間20%で伸びているので親和性が高いことは間違いないと思います。
スマイルホーム長谷氏:資金調達が力を入れている状況であります。サービスの充実とその後のロングランには資金調達が欠かせないと考えているので、現在は資金調達に注力しています。
DXを進めるには業界全体の連携と人材が必要
DBC須崎:ありがとうございました。それでは最後に、建設DX、不動産DXについての業界としての動向をどのように捉えているのかと、自社サービスの今後の展開について教えてください。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:弊社のサービスは、既存の不動産事業をDXで効率化する流れではなく、むしろ流れを変えていく側だと考えています。サービスとしては1時間や2時間単位で不動産賃貸するようなイメージです。
不動産業界において、リモートワークによるオフィスの縮小は歓迎されていないのが現状です。リモートワークによって、個人の働き方は多様化していく中で、それに伴い不動産産業界の売上や規模が縮小してもいいのかという話になってきます。弊社としては、社会最適として不動産業界が縮小するとしても、ニーズがあればテレワークが進む方向にかけたいと思っています。
ユニロボット楠氏:不動産業界、建設業界DXに力を入れている企業が増えているのは事実だと思います。
業界を変えていきたい、変えなければならないと感じている人が多いと思いますが、全部の効率化を目指すのではなくシームレスに繋げていき、オンライントとオフラインを融合して他国の事例とは違う形で進化させる必要があると思います。
スマイルホーム長谷氏:不動産事業は全産業の中でデジタル化が遅れているので、ここから押し上げていき、びっくりするような世界にしたいです。遅れてきたからこそ前例を参考にしてうまくできる点があると思います。
労働生産性が悪いために顧客の悩みに応えきれない部分があると思うので、そこはテックとの融合で発展していってほしいと思います。サービスの展望としては、東京に住むならこのサイトだけ見ておけばいいというサイトはまだないので、外国人が家を探すとなったらスマイルホームだよね、となったら嬉しいです。
nat若狭氏:建設テック単体では業界を変えられず、人材会社との協力が必要だと思います。建設は人が必要であり、便利なツールを入れても人がいなければどうにもなりません。
ツールを入れて魅力的な産業にしていく、若手に使ってもらう、こういう会社なら入りたいと思ってもらう必要があります。テックを提供するだけでなく、人材会社などと一緒に業界を底上げしていかないと人手不足は解消されないのでうまく連携していきたいです。
DBC須崎:建設テックや不動産テックなど領域を問わず、本当に求められているところが何という点をしっかり突き詰めていくことで、業務効率化を超えた先の顧客満足度の向上につながると思いました。
最後に登壇者の皆様から視聴者へメッセージをお願いします。
ユニロボット楠氏:ユニロボットはロボットと音声対話をサービスと提供しております。音声テクノロジーを使って一緒に業界を発展させていきたい方がいらっしゃればご連絡ください。
スマイルホーム長谷氏:テックに興味はあるが自分が導入するにあたっては腰が上がらないという状況があり、リスクを考えてしまっているのではないかと思います。実際にやってみれば労働生産性も向上してコスト削減につながり、人手不足の心配もなくなるということを考えると、むしろチャレンジした方が良いこともあると思うので、世界を変えていける起業家の皆さんと協力して頑張ってやっていきたいと思います。
nat若狭氏:弊社も人手不足なので、営業やインターンなど興味ある方がいればぜひお声がけください。今回のイベントは一度リアルでお会いしていることもあり、単発的なものではなく今後も連携させていただけるとありがたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
テレワーク・テクノロジーズ荒木氏:テレワークスペースの貸し借りをやっておりますが、テレワークについては専門家だと思いますので何かわからないことや社内で困りごとがあればいつでも相談にのります。どんな質問でもお答えできると思います。スペース活用のお話についても、貸す、活用するなどスペースに関することであればなんでもご相談いただければと思います。よろしくお願いします。
DBC須崎:ありがとうございました。各社に興味をお持ちの方はぜひお問い合わせください。
イベントの模様はこちらからご覧になれます。
PropTech&ConTech Startup Conference 2022 Review Event #2 リアル領域DXにおける事業者間連携の必要性
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